「リアルタイム」と引き換えに諦めるもの
Mac での音声のテキスト化について書かれているものの大半は、文字起こしと呼ばれようと、音声入力と呼ばれようと、字幕と呼ばれようと、ファイルの話です。録音を放り込んで、待って、文字起こしか字幕トラックを受け取る。その道は、このページのどれよりも正確です。文全体と、その次の文まで見えるモデルは、一語ずつ決めていくモデルにいつでも勝つからです。
そして、会議が進んでいるあいだは何の役にも立ちません。リアルタイム字幕はその精度を犠牲にして、通話中に唯一大事なこと、つまり読めるうちに言葉が届くことを優先しています。手元にあるのが録音で、時間に余裕があるなら、ここで読むのをやめてファイル書き起こしに通してください。そのほうが良い結果が出ます。以下はすべて、音がいま鳴っている場合の話です。
六つの経路、安い順に
- 各アプリの字幕機能。無料。Zoom、Teams、Google Meet、Slack のハドルミーティング、YouTube は、どれも無料で自前の字幕を持っていて、対応言語は macOS より多いくらいです。ただし字幕はそのウインドウの外へは出ず、いくつかはホストか管理者の許可が要り、話の途中で誰かが貼った動画にはどれも効きません。それでもまず試してください。足りるなら、それは無料です。
- Apple のライブキャプション。無料、標準搭載。Apple silicon の Mac なら、システム設定 › アクセシビリティ › ライブキャプションにあります。一つのアプリの中ではなくアプリをまたいで字幕を出す方式で、形としてはこれが正しいと思います。ただし Apple 自身のドキュメントに、すべての言語・国・地域で使えるわけではないと書かれていますし、字幕にできる言語は一度に一つで、ウインドウは、覆っているものに向けたクリックを受け取ってしまいます。項目ごとの比較は別ページにあります。
- ブラウザのライブキャプション。無料、そのブラウザの中だけ。Chrome と Chromium 系のブラウザは、自分の設定にあるスイッチ一つで、タブで再生中の音声に端末内で字幕を付けられます。タブの中の動画には本当によく効きますし、そのブラウザの外には一切関係ありません。
- クラウドの字幕サービス。サブスクリプション。端末内で動くものが対応していない言語までカバーするのがこのカテゴリで、話者ラベルと、あとから検索できる文字起こしが付いてくるのもここだけです。そのために音声は Mac の外へ出ます。仕事で使う人の多くにとって、それは細かい話ではなく、そこで検討が終わる条件です。
- 自分で動かすローカルの音声モデル。無料、ただし手間がかかる。Whisper とその後継は Mac で動きますし、出来のいいオープンソースのフロントエンドもあります。ただ、それをすべてのアプリ横断でリアルタイムに、作業しながら読めるオーバーレイに出すとなると、ダウンロードひとつでは済まず、ちょっとした開発になります。理由の大半は、この下で説明する音声まわりの仕組みです。
- リアルタイム字幕アプリ。買い切り。Subtitles はこれです。すべてのウインドウの上に乗るオーバーレイに、Mac が再生している音を流し込み、Neural Engine で 16 言語を文字にして、自分で文字起こしを保存しないかぎりディスクには何も書きません。買う価値があるのは、上の無料の四つがどれも合わなかったときで、その前ではありません。
Mac は自分が鳴らす音をどう取り込むのか
マイクは簡単です。macOS には昔からそのための API があり、権限を求めるのもごく普通のことです。難しいのはシステムオーディオのほうで、Mac の歴史のほとんどの期間、あるアプリが別のアプリの再生音を聞く正式な方法は存在しませんでした。時代は三つあり、そのツールがどの時代のものかが分かれば、知っておくべきことのだいたいは分かります。
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1
仮想オーディオデバイス
スピーカーのふりをするドライバを入れて、Mac の出力先をそこに設定し、それをマイクとして読み返します。これは動きます。そして、信号を分岐させる二つ目のデバイスを組まないかぎり、本物のスピーカーは無音になります。スクリーンショットが六枚並ぶセットアップ解説の時代です。
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音のための画面収録
そのあとの macOS では、画面収録と一緒にシステムオーディオを取れるようになりました。ドライバは要りませんが、音を聞くために画面を見る権利をアプリへ渡すことになりますし、macOS は収録インジケータでその場の全員に知らせます。
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Core Audio のプロセスタップ、macOS 14.2
アプリが Core Audio に、別のプロセス、あるいは全部のプロセスをタップさせてほしいと頼み、音声を直接受け取ります。ドライバは要らず、経路も変わらず、スピーカーはそのまま鳴り、許可するのは画面収録ではなくオーディオ録音です。このアプリがいまの形をしているのは、まるごとこれが理由です。
どうしても回避できない条件も、ここで説明しています。プロセスタップは macOS 14.2 で、しかも Apple silicon にだけ来ました。下限が 14.2 なのはそのためで、Intel の Mac をそこまで引き上げることはできません。Intel を使っているなら、上の三つの経路があなたのリストです。
Mac に字幕を出すまで、三つの手順で
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インストールして、権限を一つ与える
初回起動で、macOS がシステムオーディオの録音を求めます。この確認を見逃すと、どこにもエラーが出ないまま、バッファがすべて無音で届きます。前もって知っておく価値のある失敗は、これ一つです。セットアップガイドに、10 秒で見分ける方法があります。
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全体を対象にするか、一つのアプリに絞るか
既定は「システム音声全体」で、設定は何も要りません。一つのアプリに絞るのはメニューひとつで、そのアプリのヘルパープロセスも一緒に対象になります。ブラウザのタブの通話が、ネイティブアプリと同じように字幕になるのはそのためです。
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オーバーレイを好きな場所に置く
⇧ を押しながらドラッグすれば動かせて、置いた場所は覚えています。クリックを受け取らないのでそのまま作業を続けられますし、ポインタを重ねると、動くのではなく透けます。トップページのデモも、買う前のブラウザの中で、まったく同じように振る舞います。
14 日間、理由を問わず返金します。
リアルタイムと引き換えの精度
音声認識のモデルは、30 秒の区切りを待つものではなく、ストリーミングのモデルです。そこが、音について行く字幕と、瞬間が過ぎてから届く字幕の差になります。Neural Engine の上では実時間のおよそ 7 分の 1 で動くので、マシンは息を切らさず、ファンも今までどおりです。
macOS 26 以降、Apple は開発者向けに自前の音声認識を提供していて、速いです。ここで動いているのはそれではなく、理由は出来の良し悪しとは関係ありません。macOS 26 が必要で、このアプリは 14.2 から動くからです。プロセスタップが来たのが 14.2 で、効いてくる下限は音声の側であって、モデルの側ではありません。良いモデルを別の良いモデルに替えるためにその下限を二つ上のメジャーバージョンへ引き上げれば、まだ 14 や 15 を使っている Mac をすべて締め出すことになります。Apple のモデルがいつかタップの動くバージョンでも使えるようになったら、変わるのはこの段落です。
英語だけはモデルの選択肢が 1 つではなく 7 つあり、両立できない二つのあいだで選べます。いちばん速いものは話し手から約 160 ms 遅れて文字を出しはじめ、いちばん遅いものはより正確ですが、遅れも大きくなります。それ以外の言語は、一つの多言語モデルで動きます。この選択肢こそが、精度という問いに対する正直な答えで、このページが、誰も走らせていないベンチマークで何かに勝ったと言わない理由でもあります。
このページのどのツールでも、いまだにうまくいかないところ。人名、専門用語、略語、二人が同時に話す場面、回線の悪い早口の口語です。リアルタイム字幕はそれらを、持っておく価値があるくらいの頻度で読めるようにしますが、文字起こしと呼べるほど安定してはいません。
Mac の字幕についての質問
- Mac のシステムオーディオに字幕を付けるには?
- macOS 14.2 以降、アプリは Core Audio を通して別のプロセスの音声を直接タップできます。あなたに求めるのは、オーディオ録音の権限だけです。それ以前は、仮想オーディオデバイスを入れて出力をそこへ通す必要がありました。古い解説記事がスクリーンショットだらけなのは、そのためです。
- BlackHole やループバックドライバはまだ必要ですか?
- これには要りません。経路は変わらず、出力先も変わらず、字幕が動いているあいだもスピーカーは鳴りつづけます。ループバックドライバがいまも答えになるのは、macOS 13 以前を使っている場合と、Intel の Mac の場合です。
- リアルタイムの精度は、ファイルの書き起こしと同じですか?
- いいえ。リアルタイムのものは、どれもそうです。ファイルの書き起こしは、最初の単語を決める前に文全体を見られます。リアルタイムは、話し手がまだ話しているうちに決めなければなりません。録音があって急いでいないなら、ファイルとして書き起こしてください。
- ブラウザのタブでも動きますか?
- はい。アプリと、そのアプリが生み出すヘルパープロセスをまとめて取り込むので、タブの中の通話や動画も、ネイティブアプリと同じように字幕が付きます。名前どおりのプロセスからは音が出てこない Electron アプリも、これでカバーされます。
- 自分の声にも字幕が付きますか?
- 初期設定では付きません。聞き取るのは Mac が再生している音、つまり通話ではあなた以外の全員の声です。「字幕にする音」でマイクを選ぶと逆になり、あなたも含めたその場の声に字幕が付きます。macOS がマイクの許可を求めるのは、初めて選んだときです。
- どのくらい遅れますか?
- 英語のいちばん速いモデルは、話し手から約 160 ms 遅れて文字を出しはじめます。より正確なものは、もう少し遅れます。一つの数字ではなく選べる幅があり、どちら寄りがいいかは、会話について行きたいのか、講義を読みたいのかで変わります。
- 文字起こしを保存できますか?
- はい、頼めばできます。1 分以上の発話があると、音声が止まったとき、あるいはしばらく話が途切れて字幕が消える前に、字幕ボックスが保存するかを尋ねてきます。メニューの「書き起こしを保存…」なら、いつでも保存できます。形式は標準テキスト、Markdown、SRT のどれかで、そうしないかぎり、ディスクには何も書きません。それまでは ⌥ を押し続ければ字幕を巻き戻し、スクロールしたり検索したりできます。あとからメモや要約が必要なら、必要なのは議事録アプリで、これではありません。
- なぜ Apple 自身の音声認識ではないのですか?
- macOS 26 が必要で、こちらは 14.2 から動くからです。Apple の音声認識は速く、端末内で動きますが、決め手はそこではありません。プロセスタップが来たのは 14.2 で、それが下限であり、別のモデルのために 26 へ引き上げれば、まだ 14 や 15 を使っている Mac をすべて締め出すことになります。Parakeet は 14.2 から Neural Engine の上でストリーミングで動き、リアルタイム字幕に要るのはまさにそれです。
同じオーバーレイを、別の場所で
字幕のない動画
映画にも、配信にも、字幕トラックが最初からなかったタブにも字幕を。
Podcasts
文字起こしが一度もなかった番組に字幕を。
対応アプリ
Mac で音が鳴るものなら、字幕が付きます。その一覧と、例外。
Apple のライブキャプションとの比較
macOS には無料で標準搭載。それで足りなくなるのはどこか。
代替候補をすべて比較
Mac で字幕を出す六つの方法と、あなたにとっての正解。
アプリが何を残すのか
文字起こしを保存しないかぎりディスクには何も書かず、モデルをダウンロードしたあとに残るネットワーク通信は、断れる新しいバージョンの確認と、ライセンスキーを入力していれば月に一度のそのキーの確認だけです。